トゥレット障害とは

概要

神経疾患のひとつで、多種類の運動チックと1つ以上の音声チックが1年以上にわたって続くチック障害です。
有病率は諸説あり、1万人に数人くらいといわれることもあります。 
小児期に発症し、平均発症年齢は7歳前後とされます。ほとんどの例が14歳までに発症します。 
瞬きを繰り返す、首を振るなどの「単純運動チック」ではじまることが多く、咳払い、発声などの「単純音声チック」が加わります。ひとつのチックが消失してもすぐまた新しいチックが出現するといったように、数週間~数ヶ月の周期で増悪・軽快を繰り返し、慢性化します。 
思春期頃より、顔の表情を変える・跳びはねる・においをかぐ、自分をたたく、人や物にさわるといった「複雑運動チック」や、動物のようにほえる・自分や他人の発した言葉を繰り返す、わいせつな言葉を発するといった動作をする「複雑音声チック」が加わります。そして多くの場合、強迫性障害、注意欠如・多動性障害、睡眠障害、学習障害、自閉症スペクトラム障害、不安・抑うつ傾向などの併発症を伴います。怒り発作という、突然コントロールがきかないほどの暴力をふるう症状も認められることがあります。

性別では、女子より男子に多くみられます(女1:3男とされる)。 
患者さんの約半数は18歳頃までにほとんどの症状が消失しますが、個人差があり、少数ながら、成人後も長期間重症のチック症状が続く方もいます。また、チック自体よりも併存症の方が問題となることもあります。

原因

遺伝要因と環境要因の両方が関係しているとされています。必ずしもすべてが遺伝するわけではありませんが、同じ家系内にトゥレット障害の患者さんがいる場合、そうでない家系よりも発症する可能性は明らかに高いとの報告もあります。
かつては、親の育て方や本人の心がけに問題があって起こるものとされ、親を責める風潮が根強く存在しましたが、現在、その考え方は否定されています。

大脳基底核という、脳内の、運動の調整に関わる部位を含めた回路の異常が、主要な発症原因と考えられています。ド-パミン系やセロトニン系などの神経伝達物質の異常が関係しているともいわれています。

治療

心理教育および環境調整が効果をあげることが多いです。特に小児の場合、ストレス因子の除去、疾患から生じる二次的な劣等感の除去や予防、症状から生じる、周囲の偏見や、学校でのいじめの予防などが重要とされます。本人・家族・教師など周囲の人々に、障がいの特徴を正しく理解してもらい、チックや併存症をもちながらも成長し、社会適応できるように支援することが大切です。
心理教育および環境調整だけで解決できない場合、薬が必要になります。抗精神病薬などによる薬物療法が一定の効果を示すとされています。チックだけでなく、併存症もふくめたどの症状に的を絞るのか、また、副作用の程度も考慮して選択されます。

海外では、行動療法のひとつである「ハビットリバーサル」(チックと両立しないような動きを身につける)という方法の有効性が示されつつありますが、わが国ではまだあまり普及していません。 

いかなる治療法でも解決しない難治性トゥレット障害について、顎関節を含む歯科的、口腔外科的アプローチによる歯科スプリント治療、大脳基底核に電極を埋め込み持続的に刺激をする深部脳刺激療法(DBS)も試みられはじめています。

よくある質問(専門的内容は医師にご相談ください)

Q.「トゥレット」とは何ですか?

ジル・ド・ラ・トゥレット博士(Georges Gilles de la Tourette; 1857-1904)
ウィキペディア海外版より

A.フランスの医学者、ジル・ド・ラ・トゥレット博士の名前にちなんでいます。1885年に、重いチックをもつ症例9例についての論文が、フランスの医学雑誌に掲載されました。チックのなかでもより重症の症例を、トゥレット症候群と呼ぶようになりました。 

Q.チックとトゥレット障害はどう違うのですか?

A.トゥレット障害の症状は、ほかのチック障害と同様、チックそのものです。複数の運動性チックや音声チックが1年以上にわたって続き、生活に支障をきたしてしまうようなチックの中でもより重症なものが、トゥレット障害と診断されます。医師による診断基準として、アメリカ精神医学会の「DSM」などが用いられます。

Q.チックの症状はよくなりますか?

A.大半(100人中95人程度)は一過性のチックで、とくに治療することなく、自然に消えていきます。しかしひとつの症状が消えたかと思ったら、今度は別の症状が現れることもあります。多くは1年以内におさまりますが、1~2種類のチックが残り、慢性化することもあります。重症のトゥレット障害でも、年を重ねるうちに徐々に症状が軽くなり、生活上問題になるほどの症状はなくなることがほとんどです。

Q.チックには多彩な症状があると聞きましたが、どんなものがありますか?

A.髪を抜く、口の中をかむ、作り笑いをする、こだわりがある、においをかぐ、といった反復動作をチックの症状とする専門家もいますが、単なる「くせ」との判別が難しく、チックに含めないこともあります。社会的に受け入れがたい言動を繰り返す「汚言症」や、些細なことに突然腹を立てコントロールできなくなってしまう「怒り発作」はトゥレット障害の特徴のひとつです。

Q.トゥレット障害になりやすい体質はありますか?

A.かつては、子どもへの過干渉(完璧主義)など、親の育て方に問題があると発症すると言われてきましたが、現在では、生まれつきチックを起こしやすい脳の体質があるというのが主流の考え方です。遺伝は関係があるとされていますが、親がそうなら、子もかならず発症するというわけではありません。実際に発症するかどうかは、遺伝+環境的な要因に左右されるようです。

参考文献:「健康ライブラリーイラスト版 チックとトゥレット症候群がよくわかる本」 星加明徳 講談社 2010年

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